この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
あの海の果てまでも
第6章 秋桜の涙 〜絢子の告白〜
春馬は巧みに車を走らせながら、絢子に穏やかに話しかける。
「以前父の助手としてお宅にお伺いしたことがあります。
お父上の西坊城子爵は父と句会でご一緒していたようですね。
それがご縁で顧問会社をご紹介くださって…。
本当にご親切でお優しいお父上ですね」
「…そうでしたか…。
恐れ入ります…」
…家にいらしたことがあったなんて…。
私はお目にかからなかったから、学校に行っていたのかしら。
その時に会いたかった…と思いつつもやはりそれは恥ずかしいような気もする。
…と、別れ際に雪子が耳元で囁いた言葉が脳裏に過ぎる。
『おうちまで送っていただいたらお兄様をお引き止めなさいよ。
…お兄様、これから多分武蔵野のひとにお逢いに行かれるんだと思うの。
どうやら武蔵野の奥に別邸をお持ちみたい。
そこで逢引きなさるのよ。
多分道ならぬ恋よね。
そんなふうにして人目を忍んで逢われるんですもの。
…だから、絢子さんがお兄様をお引き止めして、晩餐にでもお誘いになってよ。
絢子さん、絶好のチャンスよ』
「以前父の助手としてお宅にお伺いしたことがあります。
お父上の西坊城子爵は父と句会でご一緒していたようですね。
それがご縁で顧問会社をご紹介くださって…。
本当にご親切でお優しいお父上ですね」
「…そうでしたか…。
恐れ入ります…」
…家にいらしたことがあったなんて…。
私はお目にかからなかったから、学校に行っていたのかしら。
その時に会いたかった…と思いつつもやはりそれは恥ずかしいような気もする。
…と、別れ際に雪子が耳元で囁いた言葉が脳裏に過ぎる。
『おうちまで送っていただいたらお兄様をお引き止めなさいよ。
…お兄様、これから多分武蔵野のひとにお逢いに行かれるんだと思うの。
どうやら武蔵野の奥に別邸をお持ちみたい。
そこで逢引きなさるのよ。
多分道ならぬ恋よね。
そんなふうにして人目を忍んで逢われるんですもの。
…だから、絢子さんがお兄様をお引き止めして、晩餐にでもお誘いになってよ。
絢子さん、絶好のチャンスよ』