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あの海の果てまでも
第6章 秋桜の涙 〜絢子の告白〜
…逢引き…武蔵野に別邸…道ならぬ恋…。
絢子には初めての、衝撃的な言葉ばかりだった。

そんな大人の恋をしている春馬を、どうやって誘えば良いのだろう。
いや、そんなこと絶対に出来ない。
恥ずかしがり屋で口下手な自分に出来るはずがない。
大体、恋人とこれから逢うひとを晩餐に誘うなど、あまりに失礼だし、非常識だ。
そんなことは我が儘で自分勝手で礼儀知らずではしたない人間がするものだ。
決して淑女がする行為ではない。

絢子は諦める理由をひたすら探し続ける。

…けれど…

盗み見るように、隣で軽快にハンドルを操る魅力的な美しい男を睫毛越しに窺う。

…知的な額、西洋人のように高い鼻梁、優し気な形の口唇、そして引き締まった男性らしい顎…。
肩幅は広く、シャツに覆われた胸板は厚く逞しい。
…ハンドルを握る手は指が長く、美しい筋肉となめらかな皮膚に覆われ、知的な職業を連想させる品格あるものだが、成熟した男性の魅力が漂うものでもあった…。

絢子の胸が生まれて初めて甘く切なく疼く。

…この方と…もっと一緒に居たい…。

いいえ。

絢子の中に熱く沸るような火花のような熱の塊りが生まれた。

…ずっと、一緒に居たい。

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