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あの海の果てまでも
第6章 秋桜の涙 〜絢子の告白〜
「…ええ…。
ぜひにとお誘いしたのだけれど…」
綾子の清楚な瞳がやや潤み、きらきらと輝いている。

…あら…。
絢子さん、いつもとなんだか表情が違うわ…。
…それに、ご自分から殿方を晩餐に誘われるなんて、初めてのことだわ。

方子は驚き、改めて眼の前の愛娘をまじまじと見つめる。

…二人の姉ほどの華やかさや美貌や個性は乏しいけれど、小柄で色白で地味ながらも目鼻立ちは品良く整っている。
楚々として慎ましやかな雰囲気や性格は、恐らくどの家に嫁いだとしても嫁としては何よりも好まれる娘だと思う。

大人しくはにかみ屋なので、社交界デビューをしたもののまだ夜会やお茶会には数えるほどしか出席していないのだが、華族新聞に掲載された絢子の写真を見た夫人や、親戚筋からの紹介で、少しずつ縁談話は出てきている。
貴族の娘たちは、女学校在籍中に縁談が纏まることが通常であったから、17歳の絢子にも決して早いわけではない。

けれど絢子は、方子も夫も溺愛している末娘なので、早く手放したくはなく、敢えて積極的には動いてはいなかったのだ。

姉二人が西坊城家よりかなり格上の貴族に嫁いだのだが、なかなかに苦労しているという話も聞く。
しっかり者で勝ち気な姉たちはそれでも諸般上手くこなしているようでそう心配はなかった。

…けれど、絢子は今はかなり丈夫になったが、身体も弱く、何より内気で大人しい性格だ。
とても大貴族の家に嫁がせることはできない。
かと言って、家名だけが取り柄の貴族や、財政乏しい貴族の家に嫁がせることも、心配でならない。

…できるだけ裕福で名家出身で知的で頼もしくて…けれど絢子さんが姑や舅に気を遣わないでのびのび過ごせる良いお相手はいないかしら…。
そういうお相手なら、貴族でなくても良いのではないかしら。

方子はそう常日頃考えていたのだ。

…そこに浮かんで来たのが、今夜絢子を送ってきてくれた大紋春馬その人であった。





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