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あの海の果てまでも
第6章 秋桜の涙 〜絢子の告白〜
…長めの艶やかな黒髪は、まるで極上の絹糸のようだ。
卵型の優美な輪郭、その肌は透き通るように白く眩しい光を放っているかのように見えた。
優しい形の柳眉、長く濃いまつ毛に縁取られた切れ長の大きな瞳は射干玉の闇のように漆黒でやや潤んでいた。 
形の良い鼻梁、口唇は紅を引いていないのに珊瑚色に艶めいていた。

…こんな…こんなにもお美しい男の方がいらっしゃるなんて…。

絢子は茫然としたように美しい青年の姿に釘付けになった。

…まるで…まるでこの世の方ではないみたい…。

とても生身の人間とは思えぬほどに、貌立ちの完璧な美しさと、辺りを払うような神秘性と…そして何よりも離れたところからでも感じ取れる薫り立つような色香を、その青年は静かに放っていたのだ。

「絢子さん!早くこちらにいらっしゃいよ。
ご紹介するわ」

いつまでも立ち竦んでいる絢子の手を引きながら、雪子はその青年の前まで足早に近づいた。

「縣暁様よ。
縣男爵家のご次男様で、お兄様のご友人。
…それから、私の憧れの王子様」



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