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あの海の果てまでも
第6章 秋桜の涙 〜絢子の告白〜
春馬がやや驚いたように凛々しい眉を上げる。
「私と?」
「ええ、お兄様と。
絢子さん、社交界デビューなさったばかりなのよ。
ワルツもまだあまり踊られたことはないの。
お兄様は夜会に慣れていらっしゃるし、何よりワルツがお上手じゃない?
今宵は絢子さんをエスコートして差し上げてよ」
急な展開に絢子の全身がかっと熱を持ったように熱くなる。
…舞踏会のワルツ…。
最初と最後のワルツ…。
それは相思相愛の相手と踊るもの。
特別な、暗黙の了解のもの。
それくらいの知識は、絢子にもあった。
春馬は穏やかな微笑みを浮かべながら一瞬、傍らの暁に視線を向け…やがて、朗らかに答えた。
「…絢子さんには私などよりもっと相応しいお相手はたくさんおられるでしょう。
もっとお若い名門ご出身のご子弟が…。
第一私は貴族ではないし、子爵令嬢の絢子さんと踊るには分不相応です。
それこそ、絢子さんにご迷惑をお掛けすることに…」
「いいえ、大紋様。
そのようなことはございませんわ。
ぜひとも、娘と踊っていただけますように心よりお願い申し上げます」
…絢子の背後から、丁寧だがきっぱりとした方子の声が飛んだ。
「私と?」
「ええ、お兄様と。
絢子さん、社交界デビューなさったばかりなのよ。
ワルツもまだあまり踊られたことはないの。
お兄様は夜会に慣れていらっしゃるし、何よりワルツがお上手じゃない?
今宵は絢子さんをエスコートして差し上げてよ」
急な展開に絢子の全身がかっと熱を持ったように熱くなる。
…舞踏会のワルツ…。
最初と最後のワルツ…。
それは相思相愛の相手と踊るもの。
特別な、暗黙の了解のもの。
それくらいの知識は、絢子にもあった。
春馬は穏やかな微笑みを浮かべながら一瞬、傍らの暁に視線を向け…やがて、朗らかに答えた。
「…絢子さんには私などよりもっと相応しいお相手はたくさんおられるでしょう。
もっとお若い名門ご出身のご子弟が…。
第一私は貴族ではないし、子爵令嬢の絢子さんと踊るには分不相応です。
それこそ、絢子さんにご迷惑をお掛けすることに…」
「いいえ、大紋様。
そのようなことはございませんわ。
ぜひとも、娘と踊っていただけますように心よりお願い申し上げます」
…絢子の背後から、丁寧だがきっぱりとした方子の声が飛んだ。