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あの海の果てまでも
第6章 秋桜の涙 〜絢子の告白〜
…ワルツが終わりかけた頃、絢子は意を決して口を開いた。
清水の舞台から飛び降りるような気持ち…いや、それ以上の決死の覚悟で春馬を見上げた。

「…あの…春馬様…。
また、私とワルツを踊っていただけますか?
これからもずっと…ずっと…」

…ずっと…ずっと…一緒に居てくださいますか…?

春馬は驚いたように眼を見開き…一呼吸ののちに穏やかな眼差しで絢子を見つめた。

「…絢子さん。
貴女に相応しいダンスのお相手はたくさんいらっしゃいます。
私は平民です。
子爵令嬢の貴女に相応しい相手ではありません。
今夜は妹の親友の貴女だからお相手を務めさせていただきました。
けれど、貴女と私では身分違いなのです」

「いいえ、いいえ…!
私は春馬様を…」

…愛しているのです。

絢子の切ない告白が為される前に、男は静かに優しく…しかしきっぱりと告げたのだ。

「絢子さん。
貴女に申し上げなくてはならないことがあります。
…私には心から愛している恋人がおります。
訳あって、結婚することは出来ません。
けれど私はその恋人と一生を共にすることを心に決めております。
人生のすべてを、生涯の愛を、運命を、恋人に捧げるつもりで生きております。
…ですから、貴女とワルツを踊ることはもうないでしょう」


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