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あの海の果てまでも
第6章 秋桜の涙 〜絢子の告白〜
…やはり…そうだったのだ。
武蔵野の恋人は実在したのだ。

絢子は全身の力が抜け、座り込みたくなる衝動と必死に闘う。
けれど、聞かずにはいられない。

「…どのような方なのですか?
春馬様の愛おしいお方とは…」

…自分にはないものをたくさん持っている方なのだろう。
知りたくないけれど知りたい。
涙を堪えながら、男の答えを待つ。

春馬は少し躊躇したのち、淡々と…けれど明らかに今までにはない熱を持って語り始めた。

「…とても美しいひとです。
美しいだけでなく心優しく聡明で努力家で…ひたむきで一途なひとです。
…少し不遇な生まれなひとなのですが、その運命を恨むことなく周りの人間に慈愛を与えられる温かなひとです。
…けれどどこかいつも少し寂しそうで…。
だからそのひとが笑うと嬉しくて…笑顔にするためなら何でもしよう。何でもしてあげたい。
そう思えるひとです。
…私はそのひとに会ってから人生が変わりました。
そのひとのために生きよう。
そのひとのためならたとえ自分の命を捧げても惜しくはない。
…そう思って生きています」

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