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あの海の果てまでも
第6章 秋桜の涙 〜絢子の告白〜
「…お嬢様…」

絢子は静かに口を開いた。

「…私ね。
先日の舞踏会で春馬様とワルツを踊ったの。
緊張して躓きそうになって…周りはお上手な方ばかりで、恥ずかしくて…泣き出してしまって…もう良いです…て帰ろうとした私に春馬様は『こちらにいらっしゃい』とバルコニーに連れて行って下さったの。
『ここなら誰もいないから何も気にせず踊れますよ。
音楽は聴こえるから大丈夫です。
二人だけのダンスホールですよ…』…て。
…それから私たちバルコニーで踊ったの。
春馬様のリードはお優しくてお上手で…本当に楽しかったわ。
まるで雲の上で踊っているみたいだった…。
夜空にはたくさんの星がきらきらと瞬いていて…私と春馬様がこの世に二人きりのような気がした…。
あんなに心が沸き立って胸が苦しいくらいに幸せだったこと…生まれて初めてだったわ。
このまま死んでもいい…とさえ思ったの。
…それで…ワルツが終わった時に私、思い切って告白していたの。
これからもずっとずっと、私とワルツを踊って下さいますか?て…。
そうしたら…」

絢子はふっと泣き笑いの表情を浮かべた。
…あの夜の辛い記憶が蘇る。

「…春馬様にきっぱりとお断りされてしまったの。
春馬様には心の底から愛している方がいらっしゃるそうよ。
それはそれはお美しくて素晴らしい方なのですって…。
春馬様が命を捧げても惜しくない方なのですって。
訳あってその方と結婚することは出来ないけれど、生涯を共にする決意をしている…と。
…雪子様から薄々聞いていたのだけれど、やっぱりそうだったわ…」

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