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あの海の果てまでも
第6章 秋桜の涙 〜絢子の告白〜
「…お嬢様。
どうかお考え直されて下さい。
やはりこのようなことは、おやめになった方がよろしいかと存じます」
昼なお暗い武蔵野の奥深い林…。
鬱蒼と繁る樹々で、まだ午後三時だというのにまるで黄昏時のように薄っすらとしか陽が差さない。
林道の木陰に白戸は車を止めたのちも、その言葉を繰り返した。
「お屋敷に戻りましょう。
このように隠れて待ち伏せなど、お嬢様の品位に関わります。
…大紋様に関することでしたら、如何ような調査でも私がいたします。
ですから…」
「いいの。
私が…私がこの眼で見たいの。
見て確かめたいの」
一息つき、絢子はきっぱりと告げた。
「…春馬様の、恋しいお方を…」
どうかお考え直されて下さい。
やはりこのようなことは、おやめになった方がよろしいかと存じます」
昼なお暗い武蔵野の奥深い林…。
鬱蒼と繁る樹々で、まだ午後三時だというのにまるで黄昏時のように薄っすらとしか陽が差さない。
林道の木陰に白戸は車を止めたのちも、その言葉を繰り返した。
「お屋敷に戻りましょう。
このように隠れて待ち伏せなど、お嬢様の品位に関わります。
…大紋様に関することでしたら、如何ような調査でも私がいたします。
ですから…」
「いいの。
私が…私がこの眼で見たいの。
見て確かめたいの」
一息つき、絢子はきっぱりと告げた。
「…春馬様の、恋しいお方を…」