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あの海の果てまでも
第6章 秋桜の涙 〜絢子の告白〜
『白戸。
一生のお願いよ。
私を春馬様のところに連れて行って』

女学校から帰るや否や、絢子は白戸を捕まえると必死に頼み込んだ。

『お嬢様?
何ごとですか?』
白戸が怪訝そうに端正な眉を寄せる。

…久々に登校した教室で、絢子は雪子からある驚くべき事実を聞かされたのだ。

『今日、お兄様は武蔵野の別宅に行かれるの。
朝食の席で運転手を断っていたから間違いないわ。
…多分、恋人に逢いに行かれたのよ。
ああ!どんな方なのかしら。
…きっと性悪な悪女に違いないわ!
だってあんなに清廉な紳士のお兄様を道ならぬ恋に引き摺り込んだお方よ?
絶対に我儘で傲慢で鼻持ちならない方よ!
その方のためにお兄様が一生結婚しないなんて理不尽だわ!
…私はお兄様のお嫁様は絢子さんが良かったのに。
本当に悔しいわ!』

憤慨する雪子の話を聴き、絢子は不意に抑え難い欲望に襲われたのだ。

…春馬様の愛する方をこの眼で見てみたい。
いいえ、見なくてはならないわ…。
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