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あの海の果てまでも
第6章 秋桜の涙 〜絢子の告白〜
…春馬の武蔵野の別宅は直ぐに分かった。
雪子から大まかな場所は聞いていた。
武蔵野の森に近い雑木林の奥深くにある住宅など、数えるほどしかない。
近隣の農家の農夫に聞けば家は直ぐに判明した。
『ああ、あの男前の弁護士先生のお屋敷かね』
…この辺りで如何にも上流階級の洒落た別宅など、ひとつしかなかったからだ。

車を目立たぬ林道の木陰に駐め、絢子は車内から息を潜めて春馬の帰りを待った。

「本当に今日はこちらにお帰りなのでしょうか?」
白戸が腕時計を見ながら尋ねた。

「間違いないわ。
春馬様は別宅に行かれる時はご自分で運転されるのですって」

…と、絢子が乗っている車の脇道を、一台のアストンマーチンが風のように走り抜けて行った。
見間違える筈がない。
生まれて初めて、恋しい男の運転で助手席に乗った車なのだから。

「春馬様のお車だわ!」
絢子は小さく叫び、素早く目を凝らす。
…運転席に春馬らしき男性がハンドルを握っているのは確認出来た。
けれど助手席の人物までは特定は叶わなかった。

…車はあっという間に煉瓦造りの瀟洒な家の門扉の中へと消えて行った。

絢子は意を決して車のドアを開け、外に出る。
「お嬢様…!」
白戸が慌ててそれを追う。
「お待ち下さい!お嬢様。
何処に行かれるのですか⁈」

絢子は足音を忍ばせながら、歩き出す。 
落ち始めた唐松の葉がかさかさと鳴る。

「お嬢様!」

白戸の呼びかけに振り向くことなく答える。

「春馬様の恋人のお顔を拝見したいの。
拝見するまで、帰らないわ」

…自分への宣言のように。








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