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あの海の果てまでも
第6章 秋桜の涙 〜絢子の告白〜
「…春馬様…」

男の真摯な眼差しが絢子をじっと見つめる。
「…貴女は私にとって大切な方です。
決して不幸になって欲しくないのです。
貴女の可愛らしいお貌に相応しい笑顔が、また戻って来て欲しいのです」

「…春馬様…私…私…」
…なんて…なんてお優しい方なのだろう。
迷惑に思う所か、私を立ち直らせようとしてくださっているのだ…。
絢子はとめどなく涙を流しながら、春馬を見つめた。

「…貴女が笑顔になる方法を、私と一緒に考えてゆきませんか?」
春馬の手が、そっと優しく絢子の頬の涙を拭う。
それはひたすらに慈愛に満ちた仕草だった。

…春馬様はこんなにも私を気遣ってくださる…。

これで充分だと思わなくてはならない。
これでこの恋とお別れしなくてはならない。
…だって、春馬様が愛していらっしゃるのは暁様で…私をあのように熱く激しく求めてくださることなど、絶対にあり得ないのだから…。

絢子は自分の心に必死に言い聞かせる。
それでもやはり、溢れる涙を止めることは出来なかったのだ。



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