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あの海の果てまでも
第6章 秋桜の涙 〜絢子の告白〜
…その声は不意に絢子の耳に飛び込んで来た。

サンルームへ続く扉は少し開いていた。

「…それはお悩みですわね、方子様。
お気持ちはよく分かるわ。
…私から拝見すると、絢子様と大紋様はとてもお似合いなお二人ですもの。
…大紋様は息子の礼也さんのご親友でしてね。
男振りといいご職業といいご性格といい、申し分のない素晴らしい青年ですわよ。
…貴族では無いけれど、ご先祖は代々ご典医を務められたお家柄だそうですから、ご立派ですし、何より資産家でいらっしゃるわ。
絢子様は西坊城子爵家のご令嬢。
お互いにまたとないご結婚のお相手ではないかしら」
…聴き覚えのあるやや甲高い声は、縣男爵夫人…縣梁子だろう。
自分の話題が出てきた驚きに、絢子は息を呑む。

「…ありがとう、梁子様。
親馬鹿は承知で申しますけれど、絢子はとても淑やかで素直な娘なのですよ。
二人の姉たちほど華やかな社交家では無いけれど、優しくて控えめで良い子なのです。
大人しい性格なので、できるだけ本人が気後れしない気の張らないお家に嫁がせたいと思っていましたの。
…そうしたら、絢子さんが大紋様のことを…」
方子が密やかなため息を吐く。

「恋をされたのね」

含み笑いの梁子の言葉に、思わず胸の前で手を組む。


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