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あの海の果てまでも
第7章 秋桜の涙 〜新たなる夜明けへ〜

「私…私…」
絢子は子どものように泣きじゃくる。
礼也の温かな言葉が、そのまま春馬の肉声に重なったのだ。
「…春馬様が…そんなふうに私を見てくださっていたなんて…。
…仕方なく…結婚してくださったのだと…私が…自殺騒ぎを起こして…両親に乞われて…。
…暁様が春馬様から去られたから…それで…仕方なく…」
「そんな不実なことをする男ですか?
大紋春馬という男は…」
近い距離で礼也が微笑む。
絢子は首を振る。
「そんな方ではありません。
私が愛した春馬様は…お優しくて誠実で寛大で…」
…そうだ…。
そんな素晴らしい方だったのだ。
…あの方は…。
秋の透明な陽光の中、駿馬を駆ける男の凛々しい姿が甦る。
『初めまして。大紋春馬です』
馬上からしなやかに降り立ち、爽やかに優しく語りかけ、微笑んでくれた。
…私の初恋の王子様は…。
「…そうです。
春馬は貴女を妻に選んだ。
それは彼の偽りのない心の現れです。
…運命の悪戯がなければ、きっと貴女たちは添い遂げることができたのです」
ふいに、礼也の品格ある雄々しい貌が悲しげな色を帯びる。
「…暁とあんな形でまた再会さえしなければ…」
絢子は子どものように泣きじゃくる。
礼也の温かな言葉が、そのまま春馬の肉声に重なったのだ。
「…春馬様が…そんなふうに私を見てくださっていたなんて…。
…仕方なく…結婚してくださったのだと…私が…自殺騒ぎを起こして…両親に乞われて…。
…暁様が春馬様から去られたから…それで…仕方なく…」
「そんな不実なことをする男ですか?
大紋春馬という男は…」
近い距離で礼也が微笑む。
絢子は首を振る。
「そんな方ではありません。
私が愛した春馬様は…お優しくて誠実で寛大で…」
…そうだ…。
そんな素晴らしい方だったのだ。
…あの方は…。
秋の透明な陽光の中、駿馬を駆ける男の凛々しい姿が甦る。
『初めまして。大紋春馬です』
馬上からしなやかに降り立ち、爽やかに優しく語りかけ、微笑んでくれた。
…私の初恋の王子様は…。
「…そうです。
春馬は貴女を妻に選んだ。
それは彼の偽りのない心の現れです。
…運命の悪戯がなければ、きっと貴女たちは添い遂げることができたのです」
ふいに、礼也の品格ある雄々しい貌が悲しげな色を帯びる。
「…暁とあんな形でまた再会さえしなければ…」

