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あの海の果てまでも
第7章 秋桜の涙 〜新たなる夜明けへ〜
「絢子さん…。
貴女は…何という優しい方だ…」

礼也は思わず絢子を抱き締める。
それは、この如何にも一見弱々しくおとなしげに見える女性の芯の強さ、心の寛容さ…そして限りない優しさに触れた感動から出た行為だった。

…夫が男と駆け落ちし身重の自分が取り残され、どれだけ悲しく不安だったことだろうか…。
それなのに、暁を一言も責めずに寧ろ詫びた。
自分のせいで、二人が別れることになったのだと告白し…。

礼也は、これまで絢子を両親に溺愛され大切に育てられてきた貴族の箱入り娘としか見ていなかったような気がする。
しかし今日、絢子の芯の強さ、人間性の素晴らしさに感動を覚えたのだ。

…やはり、春馬が結婚しようと決めただけのひとだ…。

「…絢子さん…。
貴女は必ず素晴らしいお母様になられますよ。
そして、大紋家のご立派な女主人になられることでしょう。
及ばずながら私が生涯お力になることをお誓いいたします」

「…礼也様…ありがとうございます…」
礼也の腕の中で、絢子が嬉しげに返事をした。

…と、その時…。

腕の中の絢子が不意に微かな呻めき声を上げ、身体を丸めた。
礼也は慌てて腕を解き放つ。

「失礼いたしました。
力を入れすぎましたね…。
…絢子さん?」

けれど、どうも様子がおかしい。
絢子はお腹を庇うように俯いたまま…弱々しい声で訴えた。

「…違うのです…あの…礼也さま…。
…陣痛が…きたよう…なのです…」

礼也は仰天し、絢子を抱き起こした。
「じ、陣痛!?
陣痛…と言うと…も、もしや…」

「…ええ…。
実は今朝おしるしが…。
…もう…生まれるのかも…しれません…」

おしるしなるものがなんたるかをまだ独身の礼也は知らない。
けれど、どうやら絢子の出産が間近に迫っていることだけは察することができた。

礼也は絢子を抱きかかえながら、叫んだ。

「誰か!誰か来てくれ!
奥様が産気づかれた!!」



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