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あの海の果てまでも
第7章 秋桜の涙 〜新たなる夜明けへ〜
礼也は、思い起こす。

…あの麗しい小さな伯爵令嬢に出会った日のことを…。

「私の父と北白川伯爵は長年の親友でね。
外交官の伯爵は海外暮らしが長い。
奥方は梨央さんを産まれるとすぐに亡くなってしまわれた。
身体もお弱くまだお小さい梨央さんを日本に残して海外にゆかれるのを案じられた伯爵に私の父が提案したのだ。
息子の私を後見人、そしていずれは婚約者にすることを…。
…父は野心があったのだろうね。
我が家は貴族と言っても成り上がりに属する。
皇室に近い宮家の血筋も引いておられる北白川伯爵家と縁戚を結べば、名門貴族の仲間入りができると。
幸い私は伯爵のお眼鏡に叶い、後見人と将来の婚約者の座も射止めた。
え?
そのような愛のない結婚で良いのか…と?
…そう。
私は曲がりなりにも男爵家の後継者だ。
家を栄えさせてゆくために、結婚はあくまでも手段にすぎない。
相手が嫌いでなければ良いと思っていた。
しかも相手はまだ六歳の幼女だ。
お互い気が変われば立ち消えるような話だ。
だから気軽に会いに行ったのだよ。
…私はまだ大学生だったから、好奇心旺盛だったのだ」

…そうしたら…。

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