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あの海の果てまでも
第7章 秋桜の涙 〜新たなる夜明けへ〜
「…恋に堕ちるとはまさにこのことかと思ったよ…。
その日から私は寝ても覚めても梨央さんのことばかり考えていた。
伯爵邸には日参し、とにかく梨央さんに会いたかった…。
大学の友人には光源氏だの若紫の君だの散々冷やかされたが私は気にも留めなかった。
…梨央さんが全てだったからね」
懐かしくも切ないあの日々が甦る。
微かな胸の痛みとともに…。
「彼女は更に美しく優美に繊細に成長された。
私のことも慕ってくれていた。
十六歳の誕生日に、私のプロポーズも承諾してくれた」
…けれど…。
一瞬、凛々しい眉がほんの少し切なげに寄せられる。
「…けれど、やがて彼女の前に運命のひとが現れた。
二人の愛と絆は、たじろくほどに強く熱かった。
完敗だったよ」
そう言って、社交界きっての人気者で美男な非の打ち所がない男は朗らかに笑った。
「私は梨央様の幸せを願い身を引いた。
そうして、今は後見人として梨央さんと彼女の愛するひとの幸せを守れるよう尽力している」
その日から私は寝ても覚めても梨央さんのことばかり考えていた。
伯爵邸には日参し、とにかく梨央さんに会いたかった…。
大学の友人には光源氏だの若紫の君だの散々冷やかされたが私は気にも留めなかった。
…梨央さんが全てだったからね」
懐かしくも切ないあの日々が甦る。
微かな胸の痛みとともに…。
「彼女は更に美しく優美に繊細に成長された。
私のことも慕ってくれていた。
十六歳の誕生日に、私のプロポーズも承諾してくれた」
…けれど…。
一瞬、凛々しい眉がほんの少し切なげに寄せられる。
「…けれど、やがて彼女の前に運命のひとが現れた。
二人の愛と絆は、たじろくほどに強く熱かった。
完敗だったよ」
そう言って、社交界きっての人気者で美男な非の打ち所がない男は朗らかに笑った。
「私は梨央様の幸せを願い身を引いた。
そうして、今は後見人として梨央さんと彼女の愛するひとの幸せを守れるよう尽力している」