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あの海の果てまでも
第2章 新月の恋人たち
大紋がフリート・ストリートの王立裁判所のそばにある法律事務所に出勤すると、暁はテラスハウスに一人になる。

ミセス・マクレガーは階下の部屋に居る。
暁に気を遣わせないためだろう。
倫敦にまだ親しい友人もいない暁は、居間で黙々と英語の勉強をする。
あとは、近くのリージェンツパークに散歩にゆくくらいだ。
内気な暁はまだひとりで遠出をしたことがないし、大紋が心配してそれを許さなかったのだ。

大紋は
『暁。カレッジに入るかい?
ロンドン大学のカレッジに面白そうな専攻がいくつかあるようだよ。
何か勉強したいことはある?美術とか歴史とか…。
音楽はどう?
ピアノかヴァイオリンを習ってみる?』
さりげなく尋ねてきた。

『大丈夫ですよ。
一人で勉強するのは好きだし、向いているんです』

大紋の気持ちは嬉しいが、カレッジは学費もかなり掛かる。
ハーコートは大紋に破格の給料を出してくれたらしいが、まだ二人にそこまでの蓄えはない。
大紋は外国株をやっていたようで、その配当もあり、衣食住には困らないが、日本に居た時のように、贅沢三昧は出来ない。
暁もそんなつもりはない。

『週末は大英博物館に行こう。
エジプトの壁画が展示されていて興味深いよ。
それとも、グローブ座で芝居を観ようか?
英語の勉強にもなる。
芝居が跳ねたら、ホテルリッツで食事をしよう。
パブに行って一杯やるのも良いね』
暁の気持ちを引き立てる言葉を並べて、大紋は暁に優しくキスすると慌ただしく出かけて行くのだ。

『なるべく早く帰るよ。
…愛している。暁…』

…でも…

…春馬さんが帰宅するまで、長いな…。

暁は小さくため息を吐いた。
ミセス・マクレガーが作った昼食を食べ、お茶の時間にはミセス・マクレガーと一緒に取り留めのない話をしながら、彼女お手製のヴィクトリア・ケーキやスコーンなどを戴く。

…それは、とても穏やかで幸せな時間だけれども…。

…でも…

出窓越し、ベイカーストリートの石畳みをゆく賑やかな人々を眺めながら呟く。

「…なんだか…愛人みたいだ…」

と、自分の言葉にぞっとして、慌てて首を振る。

「何を言っているんだ。愛人なんて。
春馬さんは全てを捨てて僕と英国まで来たんじゃないか!
愛人みたいだなんて…そんなこと…罰が当たる…!」

暁は荒々しくカーテンを閉め、小さなため息を吐いた。





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