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あの海の果てまでも
第2章 新月の恋人たち
このテラスハウスに居を構えてすぐに、暁は礼也に手紙を書いた。
この住所も知らせた。
大紋と駆け落ちのように出奔してしまったが、礼也には所在を伝えたかった。
だから、手紙を書いたのだ。
…『兄さん、ごめんなさい。
許してくださいとは言いません。
けれど、謝らせて欲しいのです。
兄さんの貌に泥を塗るような真似をして、ごめんなさい。
…いいえ。
それよりもまず、兄さんをずっと騙してしまい、ごめんなさい。
ずっと言えなくて、ごめんなさい。
けれど、僕は春馬さんを愛していたのです…』
…あれから、2ヶ月以上経った。
けれど、礼也からの返事はない。
…当然だ。
僕は、恩を仇で返すようなことをしてしまったのだから。
礼也は、父親の愛人の子どもを引き取り大切に育ててくれた。
最高の教育を与えてくれた。
輝かしい人生を与えてくれた。
…何よりも、暁を愛してくれた。
…それなのに…。
暁は形の良い口唇を噛み締める。
…自分の親友と駆け落ちしてしまった弟を、礼也はどう思ったのだろうか…。
失望、軽蔑…それとも憎悪だろうか…。
暁は空を振り仰ぐ。
霧が晴れた空…。
暁の心とは裏腹な、明るく晴れ渡る空だ。
その空に、兄の端正な優しい面影が浮かび…やがて消えた。
…もう二度と、兄さんには会えないのだ…。
暁は痛む心に言い聞かせ、ゆっくりとベンチから立ち上がった。
そうして、専用庭を横切り、賑やかな表通りへと歩き出したのだった。
この住所も知らせた。
大紋と駆け落ちのように出奔してしまったが、礼也には所在を伝えたかった。
だから、手紙を書いたのだ。
…『兄さん、ごめんなさい。
許してくださいとは言いません。
けれど、謝らせて欲しいのです。
兄さんの貌に泥を塗るような真似をして、ごめんなさい。
…いいえ。
それよりもまず、兄さんをずっと騙してしまい、ごめんなさい。
ずっと言えなくて、ごめんなさい。
けれど、僕は春馬さんを愛していたのです…』
…あれから、2ヶ月以上経った。
けれど、礼也からの返事はない。
…当然だ。
僕は、恩を仇で返すようなことをしてしまったのだから。
礼也は、父親の愛人の子どもを引き取り大切に育ててくれた。
最高の教育を与えてくれた。
輝かしい人生を与えてくれた。
…何よりも、暁を愛してくれた。
…それなのに…。
暁は形の良い口唇を噛み締める。
…自分の親友と駆け落ちしてしまった弟を、礼也はどう思ったのだろうか…。
失望、軽蔑…それとも憎悪だろうか…。
暁は空を振り仰ぐ。
霧が晴れた空…。
暁の心とは裏腹な、明るく晴れ渡る空だ。
その空に、兄の端正な優しい面影が浮かび…やがて消えた。
…もう二度と、兄さんには会えないのだ…。
暁は痛む心に言い聞かせ、ゆっくりとベンチから立ち上がった。
そうして、専用庭を横切り、賑やかな表通りへと歩き出したのだった。