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あの海の果てまでも
第2章 新月の恋人たち
公園大通りを右手に折れ、ジグザグと鉤の手に曲がる小路に入ると、そこは全く印象の違う街の風景がまるで舞台背景のように色鮮やかに広がっていた。
明らかに、それまでの街とは空気感が違う。
石畳みの道はそのままだが、異国情緒に溢れた店や、そこに掲げられた色鮮やかな看板…の文字は見たことがないような、読めない文字ばかりだ。
アラビア文字なのか、中国文字なのか。はたまた…未知の国の文字なのか。
辺りに漂うのは嗅いだことがないような不思議な薫り…。
香辛料なのか、刺激的なスパイシーな薫りだ。
それも一種類ではない。
様々な不思議な、謎めいた薫りだ。
中国の古めかしい香木のような薫りもする。
さながら、そこは多国籍民が集まるバザールのような街だった。
その通りを歩く人々は、西洋人よりアジア人、地中海、中近東の地域の人々のようなカオスさであり、エキゾチックさだ。
肌の色、瞳の色、服装…すべて異なり、不協和音を奏でているようで、それらすべてがこの街に融合している…。
…ここは…何の街なんだろう。
暁は、この街に魅せられたように、思わず立ち竦んだ。
…ここは移民の人々の街なのかな…。
ピカデリーサーカスの近く、SOHOというところに雑多な賑やかな多国籍民が暮らし、商売する街があることは聞いていた。
産業革命以来、さまざまな移民が流れ込んで来た倫敦には、そんな外国人たちが暮らす街がそこかしこにあると、大紋からちらりと聞いたことがある。
ここもそんな街のひとつ…なのだろうか。
暁は久しぶりにわくわくとした高揚感に包まれた。
…それは…
この街の風景、空気感が何とは無しに、暁が生まれ育った浅草に似ているのだ。
あそこには、庶民たちの暮らす雑多な家や長屋や、食べ物屋、一杯飲み屋、出店に芝居小屋に見世物小屋、少し歩けば白粉の香が漂う遊郭があった。
綺麗なもの、そうでないもの、この世のありとあらゆるものを内包する混沌とした街だった。
…その、浅草によく似ているのだ。
…なんだか、懐かしい…。
暁は高まる胸を押さえつつ、その街に一歩脚を踏み出した。
明らかに、それまでの街とは空気感が違う。
石畳みの道はそのままだが、異国情緒に溢れた店や、そこに掲げられた色鮮やかな看板…の文字は見たことがないような、読めない文字ばかりだ。
アラビア文字なのか、中国文字なのか。はたまた…未知の国の文字なのか。
辺りに漂うのは嗅いだことがないような不思議な薫り…。
香辛料なのか、刺激的なスパイシーな薫りだ。
それも一種類ではない。
様々な不思議な、謎めいた薫りだ。
中国の古めかしい香木のような薫りもする。
さながら、そこは多国籍民が集まるバザールのような街だった。
その通りを歩く人々は、西洋人よりアジア人、地中海、中近東の地域の人々のようなカオスさであり、エキゾチックさだ。
肌の色、瞳の色、服装…すべて異なり、不協和音を奏でているようで、それらすべてがこの街に融合している…。
…ここは…何の街なんだろう。
暁は、この街に魅せられたように、思わず立ち竦んだ。
…ここは移民の人々の街なのかな…。
ピカデリーサーカスの近く、SOHOというところに雑多な賑やかな多国籍民が暮らし、商売する街があることは聞いていた。
産業革命以来、さまざまな移民が流れ込んで来た倫敦には、そんな外国人たちが暮らす街がそこかしこにあると、大紋からちらりと聞いたことがある。
ここもそんな街のひとつ…なのだろうか。
暁は久しぶりにわくわくとした高揚感に包まれた。
…それは…
この街の風景、空気感が何とは無しに、暁が生まれ育った浅草に似ているのだ。
あそこには、庶民たちの暮らす雑多な家や長屋や、食べ物屋、一杯飲み屋、出店に芝居小屋に見世物小屋、少し歩けば白粉の香が漂う遊郭があった。
綺麗なもの、そうでないもの、この世のありとあらゆるものを内包する混沌とした街だった。
…その、浅草によく似ているのだ。
…なんだか、懐かしい…。
暁は高まる胸を押さえつつ、その街に一歩脚を踏み出した。