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あの海の果てまでも
第2章 新月の恋人たち
「アンティークショップ?」
「…ええ。
…この店のオーナーは実に気まぐれで変わり者でしてね。
中国本土のさまざまな地方を渡り歩いては古い骨董品や美しい美術品などを集めて、たまに帰ってきてはそれらをごっそり置いてゆくのですよ。
最近は、中国のみならず、世界中を旅し出して…。
もう一年も音沙汰なし…ですよ。
…今頃、何処にいるのやら…」
美しい柳眉を顰め、微かなため息をついた朱の横貌は憂いを帯びていて、見惚れてしまうほどに美しかった。
「…朱さんはここのご店主さんでいらっしゃるのですよね?」
「ええ。
私は雇われ店主…と言ったところでしょうか。
オーナーはある日突然『店はお前に任せた』と言って居なくなりましたから。
…まあ、そのお言葉通り、勝手に自由気ままにやっていますがね」
朱は、ふふ…と笑い、艶めいた眼差しで暁を見遣った。
…不思議なひとだな…。
暁は何とは無しに、どきどきした。
伽羅の薫りが、暁を落ち着かせなくさせるのだ。
朱は白い手を打ち、やや大袈裟な口調で詫びた。
「ああ、申し訳ありません。
初めていらしたお美しいお客様に私の詰まらぬ話を…。
…今、お客様にぴったりなお茶をお持ちしますね」
そう言って、牡丹色の暖簾の奥に魔法のように消えたのだった。
「…ええ。
…この店のオーナーは実に気まぐれで変わり者でしてね。
中国本土のさまざまな地方を渡り歩いては古い骨董品や美しい美術品などを集めて、たまに帰ってきてはそれらをごっそり置いてゆくのですよ。
最近は、中国のみならず、世界中を旅し出して…。
もう一年も音沙汰なし…ですよ。
…今頃、何処にいるのやら…」
美しい柳眉を顰め、微かなため息をついた朱の横貌は憂いを帯びていて、見惚れてしまうほどに美しかった。
「…朱さんはここのご店主さんでいらっしゃるのですよね?」
「ええ。
私は雇われ店主…と言ったところでしょうか。
オーナーはある日突然『店はお前に任せた』と言って居なくなりましたから。
…まあ、そのお言葉通り、勝手に自由気ままにやっていますがね」
朱は、ふふ…と笑い、艶めいた眼差しで暁を見遣った。
…不思議なひとだな…。
暁は何とは無しに、どきどきした。
伽羅の薫りが、暁を落ち着かせなくさせるのだ。
朱は白い手を打ち、やや大袈裟な口調で詫びた。
「ああ、申し訳ありません。
初めていらしたお美しいお客様に私の詰まらぬ話を…。
…今、お客様にぴったりなお茶をお持ちしますね」
そう言って、牡丹色の暖簾の奥に魔法のように消えたのだった。