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あの海の果てまでも
第2章 新月の恋人たち
「…お茶の起源をご存知ですか?」
朱は茶罐を手に取り、丁寧に茶則で茶葉を掬う。
銀製のポットの下には炭火が種火で焚べてあり、湯が沸いているようだ。
ポットから茶葉を入れた茶壺に湯を注ぐ。
その所作は流れるようで、暁はうっとりと見惚れてしまった。
「…いいえ」
珈琲の勉強はしたが、お茶に関しては殆ど詳しくない。
茶を蒸らす間なのか、朱は手を止めてゆったりと語り出した。
「…中国のお茶の起源は大変古いのです。
史実では漢代、紀元前二百年頃とも言われています。
唐代には日常的な飲み物となり、近隣への輸出も始まりました。
お茶の文化が華やかに花開いたのは十七世紀以降です。
時の皇帝がお茶を好んだことから、多くの銘茶が生まれ、地方都市にも茶館や茶楼、茶房ができました。
やがて、中国から広がったお茶が日本へ伝わり日本茶を、ここ英国に伝わったお茶が紅茶を生み出しました。
英国人がこよなく愛する紅茶の起源は中国なのです。
…私はその英国の都・倫敦で中国茶の茶房を開いている…。
なんだか不思議な話ですよね」
ふふ…と微笑んだその眼差しと口唇もとには、馨しいようなえも云われぬ色香がふわりと漂っていた。
朱は茶罐を手に取り、丁寧に茶則で茶葉を掬う。
銀製のポットの下には炭火が種火で焚べてあり、湯が沸いているようだ。
ポットから茶葉を入れた茶壺に湯を注ぐ。
その所作は流れるようで、暁はうっとりと見惚れてしまった。
「…いいえ」
珈琲の勉強はしたが、お茶に関しては殆ど詳しくない。
茶を蒸らす間なのか、朱は手を止めてゆったりと語り出した。
「…中国のお茶の起源は大変古いのです。
史実では漢代、紀元前二百年頃とも言われています。
唐代には日常的な飲み物となり、近隣への輸出も始まりました。
お茶の文化が華やかに花開いたのは十七世紀以降です。
時の皇帝がお茶を好んだことから、多くの銘茶が生まれ、地方都市にも茶館や茶楼、茶房ができました。
やがて、中国から広がったお茶が日本へ伝わり日本茶を、ここ英国に伝わったお茶が紅茶を生み出しました。
英国人がこよなく愛する紅茶の起源は中国なのです。
…私はその英国の都・倫敦で中国茶の茶房を開いている…。
なんだか不思議な話ですよね」
ふふ…と微笑んだその眼差しと口唇もとには、馨しいようなえも云われぬ色香がふわりと漂っていた。