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あの海の果てまでも
第1章 運命の舟
大紋は暁を抱き竦めたまま、足早に仄暗い廊下を進む。
激しくそして甘く口唇を奪いながら、器用に扉を押し開け、客室に雪崩れ込む。

「…あ…ああ…っ…」

そのままの勢いで、寝台に押し倒される。
シーツはやや乱れていて、事後の形跡を生々しく留めている。

…客船に乗り込んでから、一昼夜が過ぎていた。
二人はもう既に幾度も愛し合っていた。
会えなかった歳月を、狂おしく埋めるかのように…。

肌を合わせると、自分の全細胞が訴えてきた。
…この男を、どれだけ待ち侘びていたかを…。

如何に恋焦がれていたのか…。
如何に飢えていたのか…。
掻き乱された感情のまま、暁は我を忘れて大紋を求めた。

「…春馬さん…早く…奪って…」

願いは、それだけだ。

「…早く…また僕を…貴方のものにして…」

そうすれば、もう後戻りはできない。
もう戻ることができない禁断の暗い沼底に、早く自ら堕ちてしまいたかったのだ。

「…暁…!」

唸るように男が低く叫び、身体を重ねる。
懐かしい男の引き締まった体躯の重み…。
骨が軋み、砕けるのではないかと思うほど抱き締められる。

「…もう、二度と君を離さない…。
…永遠に…君は僕のものだ…!」
熱い吐息とともに、耳朶を噛まれる。

「…あぁ…っ…!」

性急に、身体を開かれ、繋げられる。
…その灼熱の楔は、許されざる愛の十字架だ。

「…春馬さ…ん…」

柔らかな花弁を引き裂かれる苦痛と…それを上回る甘く爛れるような快楽を、再びこの男から与えられたことに、暁は安堵の涙を流すのだ。







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