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あの海の果てまでも
第3章 新月の恋人たち 〜朱浩藍の告白〜
…あ…。
浩藍は、その光景を眼にして思わず立ち竦んだ。
…まるで唐時代の小王宮を思わせる典雅な造りの東屋の中、一人の長身の青年がバイオリンを奏でていたのだ。
…艶やかなやや長めの黒髪はきちんと撫でつけられ、その白皙の貌は品良く端正に整っていた。
青年は漢服ではなく、仕立ての良さそうな純白のシャツに濃紺のスラックスを履いていた。
足元はぴかぴかに磨き込まれた黒革の靴だ。
青年が奏でるバイオリンのメロディは、甘く切なく…どこか心懐かしいものだった。
そして不思議なことに、その音は彼の周りの空気すら清浄にしているような…そんな調べだった。
…思わず聴き惚れる浩藍の気配に青年は気づいたのか、ふと弓を止めた。
見上げる視線と、眼が合う。
青年が驚いたようにその切れ長の瞳を見開き、息を呑んだ。
『…あ…』
叱られるかも知れない…と、身を硬くし、思わず後退りする浩藍に対して驚かさないように、青年は静かに声を掛けた。
『…君は…もしかして…浩藍?』
浩藍は、その光景を眼にして思わず立ち竦んだ。
…まるで唐時代の小王宮を思わせる典雅な造りの東屋の中、一人の長身の青年がバイオリンを奏でていたのだ。
…艶やかなやや長めの黒髪はきちんと撫でつけられ、その白皙の貌は品良く端正に整っていた。
青年は漢服ではなく、仕立ての良さそうな純白のシャツに濃紺のスラックスを履いていた。
足元はぴかぴかに磨き込まれた黒革の靴だ。
青年が奏でるバイオリンのメロディは、甘く切なく…どこか心懐かしいものだった。
そして不思議なことに、その音は彼の周りの空気すら清浄にしているような…そんな調べだった。
…思わず聴き惚れる浩藍の気配に青年は気づいたのか、ふと弓を止めた。
見上げる視線と、眼が合う。
青年が驚いたようにその切れ長の瞳を見開き、息を呑んだ。
『…あ…』
叱られるかも知れない…と、身を硬くし、思わず後退りする浩藍に対して驚かさないように、青年は静かに声を掛けた。
『…君は…もしかして…浩藍?』