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あの海の果てまでも
第3章 新月の恋人たち 〜朱浩藍の告白〜
『…兄さん…?』
…つまり…父親の本妻の子ども、長男…。
浩藍は益々身を硬くする。
『大丈夫。心配しなくて良いよ。
お父様にはもうすぐお前の弟が来るから可愛がってやるように…と言われていたんだよ』
佑炎と名乗る青年は流暢だが聞き取りやすい北京語で語りかけてきた。
恐らく、浩藍が混血で北京語がそこまで得意ではないことを了承しているようだった。
…それにしても意外だ。
父親から、そんなふうな細やかな情を感じたことはかつてなかったから。
尤も、数えるほどしか会ったことがないから、父親がどんなひとかも、浩藍はよく分からないのだけれど…。
『君みたいに美しい弟ができて、僕は嬉しいよ。
…少し…どきどきするくらいだ…』
佑炎は、浩藍より頭ひとつ分以上背が高い。
見上げるように見つめる浩藍に、佑炎は眩しげに眼を瞬かせた。
『…あの…』
浩藍が口を開こうとした時…
回廊の奥、石畳みを癇性に鳴らす靴音が近づいて来た。
『何が弟ですか。
佑炎さん。
貴方まであの日本人の淫売に騙されて』
…その吐き捨てるような冷たい声は、聞こえてきたのだ。
…つまり…父親の本妻の子ども、長男…。
浩藍は益々身を硬くする。
『大丈夫。心配しなくて良いよ。
お父様にはもうすぐお前の弟が来るから可愛がってやるように…と言われていたんだよ』
佑炎と名乗る青年は流暢だが聞き取りやすい北京語で語りかけてきた。
恐らく、浩藍が混血で北京語がそこまで得意ではないことを了承しているようだった。
…それにしても意外だ。
父親から、そんなふうな細やかな情を感じたことはかつてなかったから。
尤も、数えるほどしか会ったことがないから、父親がどんなひとかも、浩藍はよく分からないのだけれど…。
『君みたいに美しい弟ができて、僕は嬉しいよ。
…少し…どきどきするくらいだ…』
佑炎は、浩藍より頭ひとつ分以上背が高い。
見上げるように見つめる浩藍に、佑炎は眩しげに眼を瞬かせた。
『…あの…』
浩藍が口を開こうとした時…
回廊の奥、石畳みを癇性に鳴らす靴音が近づいて来た。
『何が弟ですか。
佑炎さん。
貴方まであの日本人の淫売に騙されて』
…その吐き捨てるような冷たい声は、聞こえてきたのだ。