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あの海の果てまでも
第3章 新月の恋人たち 〜朱浩藍の告白〜
『お母様…!』
浩藍は、佑炎がお母様と呼んだそのひとを振り返る。

すらりとした痩躯の身体に纏うのはアメジスト色の繻子の裾の長い漢服だ。
髪は高く結い上げられ、その髪と白い耳に飾られているのは翡翠の宝石だ。
胸元には大きなエメラルドの首飾りが飾られている。
化粧が施され整った貌は、気高く酷く冷たい印象を与えた。

背後には質素な召使いの制服を身に付けた侍女二人を従えていた。
その様はまるで中国の女帝のようだった。

『よくもまあ厚かましくこの家に来られたものですよ。
母親は間男と駆け落ちしたのですってね?
旦那様に身請けしてもらい、家まで与えられていたというのに。
やはり下品な淫売がやることは、碌なことではないわね。貴方も早くここを出ておいきなさい。
ここは貴方のような賤しい子どもが居るべきところではありませんよ』
その口唇から発せられるのは、ひたすらに冷たい罵倒だった。

困惑して眼を伏せる浩藍の前に、庇うように立ち憚ったのは、佑炎だった。
『お母様。おやめ下さい。
浩藍には罪はありません。
まだほんの子どもですよ。
しかも、母親に捨てられて一番傷ついているのは浩藍です。
その上、見知らぬ異国に連れてこられて、きっと心細いに違いありません。
…お母様の立場はわかります。
だから、優しくしてあげてくださいとは言いませんが、せめてそっとしておいていただけませんか』

『佑炎さん!』

柳眉を逆立てる母親に、佑炎は毅然と宣言するように浩藍の肩を抱いた。
『浩藍は血の繋がった弟です。
お父様に可愛がってやるようにと言われました。
私が責任を持って彼を育てます。
お母様の名誉を傷つけるようなことは決していたしません。
どうか浩藍にお慈悲をいただけますように』

母親は暫く佑炎を見つめ、諦めたようにため息をついた。
…どうやら、佑炎は彼女にとって特別に大切な息子であるようだった。

『…認めた訳ではありませんよ。
貴方は言い出したら聞かないひとですからね』

佑炎がほっとしたように微笑み返す。
『お母様…。
感謝いたします』

母親は、濃い化粧で彩られた眼差し越しに浩藍を冷たく見遣った。

『…この子が貴方の災いにならないと良いのだけれど…』

謎のような言葉を呟き、再び回廊の奥へと姿を消したのだった。


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