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あの海の果てまでも
第3章 新月の恋人たち 〜朱浩藍の告白〜
『母のことは許してあげてほしい。
…母は清王朝の血筋を引いた家柄の娘でね。
世が世ならお姫様のようなひとなんだ。
だから、とても気位が高くてね。
…父は艶福家で、君のお母さん以外にもたくさん愛人がいるんだよ。
でも、子どもをこの家に引き取ったのは君が初めてなんだ。
…しかも、日本人との間の子どもだから…動揺しているんだろう』

佑炎は浩藍を部屋に案内しながら、丁寧に説明をする。

…二つ折りに折れた大階段を昇り切り、更に見事な螺旋を描く階段を上がった最上階の長い廊下を進む。
壁には見たことのない西洋絵画が掛けられていた。
大きな天井窓にはステンドグラスが嵌め込まれ、透明な鮮やかな色の光が差し込んで来るのだ。

日本では洋館ではあるが、こじんまりとした家に住んでいた浩藍には、とても広く物珍しく思えた。
廊下をすれ違い膝を折ってお辞儀をする中国人のメイドの数も違う。
彼女たちは遠慮勝ちではあるが、ちらちらと佑炎に熱い視線を送っていた。

佑炎はにっこり笑い、浩藍を振り返る。
『君の部屋は僕の隣にしたよ。
…慣れない内は近い方がいいからね』

…どうしてこのひとはこんなに優しくしてくれるのだろう。
兄弟だけど、半分しか血は繋がっていないのに。
浩藍は不思議に思う。

『僕は大丈夫です。佑炎さん』

佑炎は立ち止まり、また眩しげに浩藍を見下ろした。

『…兄さんと呼んでくれ。
浩藍。
…僕は…そうだな。
…藍…ランと呼ぶよ。
とても可愛い響きだからね』

…ラン…か…。
マーマもそう呼んでいた。

…今頃は長崎で男と幸せに暮らしているかな…。
ふと感傷めいた気持ちが、少しだけ湧き上がる。

『嫌かな?
浩(ハオ)が良い?』
浩藍が脚を止めたので、やや心配そうに尋ねる。

浩藍は、きっぱりと首を振った。
『…いいえ。
藍で良いです。
…兄さん』

…その声に、佑炎は端正な貌にはにかんだような色を載せ、嬉しそうに頷いた。

『…ありがとう。藍』

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