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あの海の果てまでも
第3章 新月の恋人たち 〜朱浩藍の告白〜
…藍…藍…。
遠くから、声が聞こえる。
…あれは…誰なのだろうか…。
…藍…藍…。
しっかりして…。
『…マーマ…?』
母が、戻ってきたのかな?
…いや…違う。
あの、必死に自分を呼ぶ声は…。
ぼんやり開いた瞼の先に、青ざめた…見たこともないほどに真剣な面持ちの佑炎がいた。
端正な額には黒髪が乱れ、その品のある理知的な瞳が真っ直ぐに浩藍を見つめていた。
『…兄さ…ん…』
佑炎は安堵したように大きく息を吐いた。
『…良かった…意識が戻って…。
貧血を起こしていたんだ。
なかなか意識が戻らないから心配したよ』
…次第に、意識を失う前の記憶が甦る。
…そうだ…。
自分は、あのフランス貴族に売られるのだ…。
恐怖に身震いする浩藍の華奢な肩を、佑炎がしっかりと抱き寄せる。
『安心して、藍。
お前を身売りなんかさせないよ。
僕はお前を離さない。
ずっと一緒だ』
『…兄さん…』
…でも、そんなこと出来るのだろうか。
この家の権力者、永明の命令は絶対だろう。
もう浩藍の身代金は支払われているのだ。
それを覆すことなど、不可能なのではないか。
『…僕はお前を離さないよ』
…だって…
その言葉は、熱い熱いくちづけとともに、浩藍の冷え切った口唇に伝えられたのだ…。
『…愛しているから…』
遠くから、声が聞こえる。
…あれは…誰なのだろうか…。
…藍…藍…。
しっかりして…。
『…マーマ…?』
母が、戻ってきたのかな?
…いや…違う。
あの、必死に自分を呼ぶ声は…。
ぼんやり開いた瞼の先に、青ざめた…見たこともないほどに真剣な面持ちの佑炎がいた。
端正な額には黒髪が乱れ、その品のある理知的な瞳が真っ直ぐに浩藍を見つめていた。
『…兄さ…ん…』
佑炎は安堵したように大きく息を吐いた。
『…良かった…意識が戻って…。
貧血を起こしていたんだ。
なかなか意識が戻らないから心配したよ』
…次第に、意識を失う前の記憶が甦る。
…そうだ…。
自分は、あのフランス貴族に売られるのだ…。
恐怖に身震いする浩藍の華奢な肩を、佑炎がしっかりと抱き寄せる。
『安心して、藍。
お前を身売りなんかさせないよ。
僕はお前を離さない。
ずっと一緒だ』
『…兄さん…』
…でも、そんなこと出来るのだろうか。
この家の権力者、永明の命令は絶対だろう。
もう浩藍の身代金は支払われているのだ。
それを覆すことなど、不可能なのではないか。
『…僕はお前を離さないよ』
…だって…
その言葉は、熱い熱いくちづけとともに、浩藍の冷え切った口唇に伝えられたのだ…。
『…愛しているから…』