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あの海の果てまでも
第3章 新月の恋人たち 〜朱浩藍の告白〜
『…倫敦…て…どうやって…?』

…そんなこと、到底不可能に思えた。
自分たちは監禁され、監視されているのだ。
それを、どうやって…。

『私がお手伝いいたします』

佑炎の後ろから、密やかな低い声が聞こえた。

『張さん!』
扉の陰…黒いマオカラーの漢服に身を包んだ初老の執事、張が静かに佇んでいたのだ。

佑炎が安心させるように、浩藍の肩を優しく撫でる。
『大丈夫だ。
張は僕の味方だ。
この部屋に手引きしてくれたのも張なんだ』
『…え?』
…そういえば、監禁されたはずなのに、見張りの下僕たちの姿がない。

『…佑炎様の乳母は、私の亡くなった妻でした。
私は妻からいざと言うときには佑炎様をお守りするようにと頼まれ、固く約束を交わしていたのです』

『…張さん…』

普段無表情で硬質な貌しか見せていなかった執事が、初めて微かに微笑んだ。
『佑炎様のお幸せは妻の願いです。
私も佑炎様のことは、我が息子同然に思い大切にお育てしてまいりました。
…ですから、私はこの命に代えても、お二人をお守りいたします』

『…張…!
ありがとう…ありがとう…!』

佑炎はまるで本当の息子のように、声を詰まらせながら張に強く抱きついた。

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