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あの海の果てまでも
第3章 新月の恋人たち 〜朱浩藍の告白〜
…その夜半、二人を乗せた黒塗りのフォードは上海港の波止場に着いた。
慌ただしい脱出となったのは、翌日にはもうミラボーが浩藍を連れに来るからだ。
二人は目立たぬように地味な漢服を身に付け、闇に紛れるように屋敷を抜け出した。

『…ここで暫くお待ち下さい。
手筈を整えてくれた船の船長と話してまいります』
張はそう告げ、船着場に停泊している巨大な貨物船を指差した。

…外国籍の貨物船…。
一般客船だと旅券のチェックが厳しい。
二人がすんなりと欧州に向かうのは難しいだろう。
そこで、懇意にしている船会社の欧州行きの貨物船に密航させてもらうべく、昨夜張が話をつけてくれたのだ。

張がまず素早く車から降り、辺りの様子を伺う。
人影がないのを確認し、彼は停泊場の方向へと歩いていった。


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