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あの海の果てまでも
第3章 新月の恋人たち 〜朱浩藍の告白〜
『…僕は兄さんと一緒に居られるなら、それだけでいい。
それだけで幸せ…。
だから兄さん、ずっと一緒にいて。
離れないで。
離さないで…』
…母さんみたいに、どこかにいかないで…。
堪えて飲み込んだ言葉も、佑炎は静かに受け止めたように、優しく頷いた。

『…どこにもいかないよ。
藍のそばにいる。
僕たちはいつまでも一緒だ』

どちらからともなく、そっと触れ合うだけのくちづけを交わす。

…労るような、包み込むようなくちづけ。
佑炎は、浩藍にまだくちづけ以上のものを決して求めたり強いたりはしなかった。 

それは浩藍に何よりの安心感を与え、より一層に佑炎を愛する感情が深くなってゆくのだった。

…ふと、鼻先を甘い果実の薫りが掠めた気がした。

浩藍は、あることを思い出した。

『…山査子は…倫敦にもあるかな…』

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