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あの海の果てまでも
第3章 新月の恋人たち 〜朱浩藍の告白〜
『…山査子?』
不思議そうに、佑炎が尋ねた。

『…山査子…大好きだから…』
浩藍はややはにかみながら、黒眼勝ちな瞳を瞬かせた。
『…兄さんが初めて上海の市で山査子の飴を買ってくれたこと。
今でも忘れていないよ。
すごく美味しかった…』
…美味しかったし、楽しかった…。
派手やかで賑やかなお祭りのような市場…。
真っ赤にきらきらと煌く山査子の飴…。
市場は自由で、陽気で、少し猥雑で…。
頭上の空は、抜けるように青かった。
…喧騒の中、兄はずっと浩藍の手をはぐれないように優しく握りしめていてくれた…。
あんなに楽しかった経験は、生まれて初めてだった…。

…ああ…と、合点が行ったように佑炎は小さく笑った。
そうして、浩藍を抱き寄せ、優しく背中を軽く叩いた。
『山査子の飴掛けね。
藍はあのお菓子が大好きだったな。
休みの日のたびに一緒に買いに行ったね。
美味しそうに飴を食べる藍は、世界一可愛かった。
…そうだな。
倫敦に山査子はないかもしれないな。
けれど、見たことがないほど綺麗で美味しいお菓子がたくさんあるよ。
…シュガーボンボン、キャンディボンボン、ゼリービーンズ…。
…それから、山査子の花に似た美しい薔薇が英国にはたくさん咲いている。
…そうだ。
キュー王立植物園にウォーターリリーを見に行こう。
テムズ川の右岸にあるキューガーデンには世界中の珍しくも美しい植物が集められているんだ。
広大な硝子張りの温室のパームハウスがあってね。
藍が乗れるくらいに大きなオオオニバスという蓮が生育している』

『蓮の葉が?そんなに大きいの?
見てみたい…!』
眼を輝かせる浩藍の艶々した髪を、愛おしそうに撫でる。
『うん。必ず行こう』

浩藍が白く華奢な小指を差し出した。
『約束だよ?兄さん』

佑炎がそっと自分の小指を絡ませる。
『…約束だ。 
藍。一緒に行こう…』

浩藍はおずおずと自分から佑炎にくちづけをした。
佑炎の涼やかな澄んだ瞳が嬉しげに微笑んだ。

『…初めて藍からキスしてくれた…』
照れる浩藍に、佑炎はしっとりと包み込むような大人のくちづけを返し、強く抱き竦めた。

『…愛している…藍…。
…永遠に、一緒だ…』


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