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あの海の果てまでも
第3章 新月の恋人たち 〜朱浩藍の告白〜
…船は東シナ海へと方向を変え進んでいた。

海風が強くなり、潮の匂いがきつくなる。
けれど、辺りには一面の漆黒の闇が広がるだけだ。
星も月もない、無限の闇夜だ。

甲板には誰もいない。
浩藍はデッキの隅に蹲り、ぼんやりと海を眺めていた。

『…おい。綺麗な坊や。中に入れ。
風邪を引くぞ』
浩藍の肩にふわりと温かな毛布が掛けられた。

微動だにしない浩藍に、船長はため息を吐く。

『食堂に来てメシを食え。
そんな青白い貌をして…。
ぶっ倒れるぞ』

船が港から離れた時から、ひとことも口を聞かない浩藍に、菻は諦めたように肩を竦めた。

『…気が向いたら中に入れ。
俺はあんたを無事に英国まで送り届ける責任があるんだ』

…踵を返しながら、独り言のように呟く。

『…坊やは生きるんだ。
どんなに辛くともな。
それがあんたの為すべきことだ』



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