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あの海の果てまでも
第3章 新月の恋人たち 〜朱浩藍の告白〜
『…小間使い…て君、いくつ?』
…自分とそう変わらないように見える。
『十五歳さ。
三年前から働いていた。
家は蘇州の更に田舎で貧乏子沢山でさ。
下に弟や妹がたくさんいて。
けど親父は呑んだくれ。
母親は体が弱い。
俺が働かなきゃ、弟たちは死んじまう。
まあ、そんなの別に珍しくもないさ。
俺の住んでいた町はみんなそうだった。
男は十二歳を過ぎたら上海に出て働く。
…俺はそれでも良い働き口を見つけた方だ。
あそこは大金持ちの子どもたちが通う学校だった。
金持ちのボンボンてのはみんなおっとりしているからな。
だからそんなにこき使われることもなかったし、食堂のおばちゃんたちからは美味い給食のおこぼれを貰えたし、最高の仕事場だった』

…少年の小間使い…。
そんな仕事があるのかと、浩藍は初めて知った。
この少年に記憶はなかった。
…学校では常に佑炎が付き添い、細やかに面倒を見てくれていたから、そこで働く人間に気を止めたことがなかったのだ。

『…そう…』

船員は、浩藍を眩しげに一瞬見つめた。

『…あんたのことは、授業中窓の外で見かけてさ。
最初に見たときは、本当に驚いた。
こんなに綺麗な生徒がいるなんて…て。
…驚きすぎて、息が止まったくらいだ…』







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