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あの海の果てまでも
第1章 運命の舟
「…春馬さん…」
大紋は暁の艶やかな髪をくしゃりと撫でて、やや戯けて笑った。
「…さあ、僕はこれで日本では無一文だ。
こんな男に、ついて来てくれる?」

暁は大紋の首筋に力一杯抱きついた。
…ずっと恋しかった深い森の薫り…。
幾度も夢に見た温かな温もり…。
逞しく頼もしい腕が、暁を強く抱きしめる。
…これは、儚い夢の続きではない。
現実なのだ。
恋焦がれた愛おしい男は、今、暁を抱いているのだ。

「…貴方が居ればいい…。
貴方がいれば、何もいらない…。
…絢子さんには悪いけれど…僕は今、信じられないくらい幸せです…!」

「…暁…!」
切なげに歪められた端正な貌には、泣き笑いの表情が浮かんでいた。
「…ありがとう、暁…」

…愛している…。

愛の言葉は、互いの口内で甘く溶けてゆくのだった。


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