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僕たちの大切な人
第1章 僕たちの大切な人
金持ちでイケメンで頭も良くて、運動神経も良いなんて恵まれた体があれば俺だって女の子達から簡単に黄色い歓声もらえると思っていたけど実際そうではないようだ。
あいつもかなり努力してたんだな…
今まで俺がどんだけ努力していなかったのが身にしみる。
成瀬のおかげで久しぶりに一人の昼休みだ。
ネクタイを緩めて一人でボーッとする。
「……あれ?成瀬君?」
「あ?萌!………ちゃん!」
「成瀬君がお昼休みにこんな人いないところで一人でいるなんて珍しいね?」
「…あぁ…たまにはな…」
「……隣りいいかな?」
「あぁ…ど、どうぞ」
萌は俺の隣りに座ってくれた。
「……成瀬君もネクタイ緩めることあるんだね」
「あぁ…ちょっと息抜きしてたからさ…」
最近萌とも話していなかったが、前の元気な萌ではなくなっていた。
なんとなく弱々しく感じる。
「………ふぇッ」
「え!?どうした!?」
突然萌が泣き出して動揺する。
「ごめッ…ふえぇッ…大貴が…大貴がネクタイだらしなかった時のこと…ふうぅッ…思い出して……ヒックッ」
「え?」
「………ふうぅッ…最近の大貴…ヒックッ…あたしの知ってる大貴じゃないの…」
俺は自然と萌を引き寄せて抱き締めていた。
「あ…ごめ…ヒックッ……あたしなんで成瀬君にこんなこと言ってるんだろ…ふえぇッ…」
「………もうさ……あいつの事忘れたら?俺があいつの代わりになるよ」
「…フックッ………それは無理だよ…大貴の代わりなんて…ヒックッ…」
「………変なこと言ってごめん…いつかまた前のあいつに戻るまでさ…俺がそばにいるよ」
そう言うと萌はまた泣き出してしまった。
うわ…俺…萌の事こんなに悲しませてたのか…。