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DOLL
第2章 お市の場合―戦国の夢―
「よい。」

突然、手首をギュっと掴まれた。
そのまま力強く引っ張られて、身体ごと引き寄せられてしまう。

「あっ…お兄様?!」

お市のすぐ目の前に兄の顔がある。

「当ててやろう。目的は俺だろう?」

「お兄様?!ち…違います…」

言い当てられてしまって、声が上ずってしまう。

「声が上ずっておるな。」

兄が口を開くと、酒の臭いがする。

「お兄様…酔っておいでです。」

「酔ってはおらぬわ。市…この部屋まで来た、お前の勇気に免じて、抱いてやらぬでもないぞ。」

「えっ?!違います!」

真っ直ぐ自分を見つめる兄の視線に耐えられなくなり、お市は目を逸らした。

「こっちを向かぬか。」

無理やり顎を持って向き直させると、

「目を閉じよ。」

と言われ、殆ど同時に兄の唇が自分の唇の上に被さってきた。

「…ん?!」

お市はお驚きのあまり、唇を固く閉ざし歯を食いしばってしまう。

固く閉ざされたお市の唇を、兄の舌は半ば強引にこじ開けて、無理矢理口腔内に浸入してきた。

歯茎や前歯を舌で突かれれば、自然と力が抜けて、私の舌は簡単に絡めとられてしまった。

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