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パートさんの頼み事 〜アイリスの色香〜【完結】
第4章 雨音はパートさんのささやき

翌日は朝からひどい土砂降りだった



バケツをひっくり返した、とは良く言ったものだ


あまりの強い雨足に、網戸を開けてられない




暑くはないのでクーラーは付けたくないが、


閉め切ると熱気がこもって居てられない




扇風機だけでは物足らないのだ




サカタさんが仕事を終えてやって来るのは夕方だろう



ボクははやる気持ちをおさえるのにヒッシだ




まだ時間は余裕があるのでもう一度横になって眠ろうか、と思っていたら玄関の呼び鈴が鳴った



カメラのモニターにはびしょ濡れになって立っているサカタさんの姿



ボクはベッドから飛び起きて玄関へ出迎えた




「こんにちは、すごい雨よ!」



「うん、そうなんだけど、こんな時間にどうしたの?何かあった?」



ボクは職場で何かトラブルが発生したのだと勘違いしてしまった



「違う、違うのよ

 朝から土砂降りで明日まで続きそうでしょ?

 お店もヒマだったので早退させてもらったの」




手には小さなポーチぐらいしか持ってなかったから、スーパーにも寄らずやって来てくれたようです




「さぁさぁ、とにかく入って!

 びしょ濡れですよ!」



ボクは慌ただしくサカタさんを迎え入れました



とにかくタオルを渡して、ドライヤーを出してあげます



着ていた上着をハンガーにかけて、濡れた髪の毛を乾かしています



でも、



ふたりとも無言……




とっても




恥ずかしい!





昨日の夜は大胆な事をお互い言ってたけど、いざリアルで目の前に居られると


そんな大胆な行動がとれません




こんなことなら、玄関ですぐに抱き締めたりしたらよかったのかな?



あまりに長い無言の空間のなか、ドライヤーの音だけが響きます



そのうち、ドライヤーの音もやみ、静寂






ふぅー、と深い吐息を出して、口火を切ったのはサカタさんでした





「あの……、やっぱり今日は帰ろうかしら?

 何も持って来なかったし……」




ボクは慌てました……!



どうしよう!!!



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