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夜来香 ~若叔母と甥の危険な関係~
第2章 距離感
「どうしたの?…その立派な椅子……まさか姉さんが買ったの?……」

「違うよ…今、父さんが使わないから書斎から持ってきたんだよ…」

「そっか…」と言いながら私はリクライニングチェアにぽふっと座った。

「あ、これ最高だわ…寝ちゃいそうになるね……」

革張りの椅子にお尻が沈むと太腿が露になる。
すかさず陽翔の視線が泳いだ。

【あの日は何回抜いた?…ちゃんと私をおかずにしてくれた?……】

「結奈さん…焼けたね……」

僕は透き通るような色白の叔母の肌が好きなのに、勿体ないと思った。

「あぁ…グァムに行ってきたから…お土産のチョコあるから食べなよ……」

「う、うん…ありがと……」

意識してくれるのはありがたいが、このままずっとそんな態度を取られ続けられるのもやりづらい。
フローリングの床を踏みしめ、椅子のキャスターを転がし陽翔の座る椅子にぶつけた。

「な、なにするの?…」

陽翔は驚いたようにこっちを見た。
たじろいだ陽翔を椅子ごと引き寄せると、膝が私の膝の間に食い込む。
椅子に座っているのだからさほど深くはない。
陽翔は顔を赤くしていく。
咄嗟に椅子を引こうとしても私が離さない。
囁くように続けた。

「なにじゃない……まったくずっとそんな態度でいるつもり?…やりにくいんだけど……」

「そんな態度って……」

戸惑うばかりで煮え切らない。

「ちっちゃい頃はあんなにくっついて回っていたくせに……陽翔は私がカテキョするの嫌なわけ?…だったら、姉さんに言って辞めさせてもらうけど……」

これは効いたらしい…。

「嫌じゃないっ…嫌なわけないから…」

ようやくちゃんと見てくれた。
私は…ふんっ…と鼻を鳴らして……

「だったらキョドらない……いい?……約束だよ……」

私は小指を絡めていく。
逃げようとする小指を離さない。

「う、うん…」

【あ、またどもった…】

僕はいけないと奮起するように顔をあげる。
 
「わかったよ…久しぶりで距離感わかんなくなってて…ごめんなさい……」

陽翔の小指にも力が籠るのを感じる。
私は静かに小指を解いた。

「よしよし…」

そう言ってさらりとした陽翔の髪をくしゃっとしてやる。
陽翔は照れ笑いを浮かべていた。

「じゃあ、早速始めようか……宿題とかある?……」

私は椅子を下げて膝も解放してあげる。
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