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夜来香 ~若叔母と甥の危険な関係~
第14章 餓鬼
僕は両親と母の実家を訪れていた。
家の様子に叔母がいないことはすぐにわかった。

【会えるかなって思ったのにな…】

叔母は?…と誰にも聞くことはできなかった。
祖父も祖母も歓迎してくれる。
高校生になっても、お小遣いだとポチ袋を渡してくれた。

この家のことはよく憶えている。
父の実家よりもここの方が好きなのは叔母の存在があるからだ。
思い出は沢山あっても今日は長居したくなかった。
夕方にお茶を飲んで、仏壇に手を併せて帰るとなった時はホッとしていた。

次の家庭教師の日まで叔母に会えない。
父は明日単身赴任先に戻る予定だ。

【そういえば母さんの集まりっていつなんだろう?…】

本当に叔母のことしか考えられなくなっていた。

帰りの車の中でスマホが震えた。

『明後日のお昼過ぎに家に来てください。部活の時に持ってくる画材も用意してきてくださいね。楽しみにしています。』

それは森宮部長殻のメッセージだった。

【そういえばそうだった…】

登校日の約束を忘れていた。

『ありがとうございます。お邪魔させていただきます。』

そう返信すると部長の自宅のマップが届いた。


陽翔が実家から自宅への帰路についている頃、私はレンタカーを借りていた。
お盆の最終日、空きがなければいいと思っていたが、残念ながら1500ccのハッチバックが借りることができた。
約束は深夜、一泊二日の契約にサインをして必要なものを買いに向かう。

【なんでこんなもの……】

そう思いながら買い物を済ませマンションに戻った。

食欲はない。
栄養補給のゼリーを吸いだし、シャワーを浴びる。

【何のために身体を綺麗にしてるんだろ……】

髪を乾かし、メイクを施す。
これが陽翔とのデートならどんなにいいだろう。

【だめだ…とにかく今夜だけで終わらせるんだ……】

髪をアップに纏めると、買ってきた銀髪のウィッグを着けてみた。
これだけで別人のように見える。
少しだけホッとしていた。

クローゼットから服を選ぶ。
できるだけ目立たない、露出の少ない…それでいてあいつの要求を満たす服。
深夜とはいえ夏の夜、私はデニムのワンピースを選んだ。
前がボタンになっていて丈は膝上。
半袖で両胸にポケットが施されている。

深い溜め息をついて時計を視た。
レンタカーの鍵を掴んで私はマンションを後にした。
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