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夜来香 ~若叔母と甥の危険な関係~
第14章 餓鬼
【え?……】

首に巻かれた赤い首輪から、赤い紐が伸びている。
紐の行方は目の前の少年の手にあった。

「何これ…外して…外せって……」

それまで抑えていたトーンが最後の一言だけしっかりとした声となっていた。

「しぃーっ…あんまり大きな声だと注目下されるって…」

私は自らリードを外そうと手をかけると、ぐっと引っ張られていた。

「外さないでもらえるかなぁ…ペットが逃げ出さない為のリードなんだから……じゃ、ワンピ脱いで……」

「はぁ?……」

「だって下も指示通りか確かめなきゃ…」

私は指示通りワンピースの下には何も身に着けずに来ていた。

「いらっしゃいませ…」

自動ドアが開き入店の電子音とやる気のない声が聞こえた。
私は驚き少年の影に隠れるように身を竦める。
客がこっちに歩いてくる。
立ち止まったのが解った。

【視ないでっ……】

「さっさと行けよ…」

「ちっ…何のプレイだよ…」

少年の凄むような声に、中年らしい声が悪態をついて歩き去っていった。
私はとても見ることなどできない。

「向こうに行ったから…ほら、さっさと脱いでよ…」

「…指示通りにしてきたから…こんなところで脱いだら通報されるに決まってるだろ……」

少年の含み笑いが聞こえる。

「…わかんないすよ…今のおっさんも厭らしい目で視てたし…レジの兄ちゃんも…もしかしたらバックヤードに誰か居るかもしんないし…通報どころか依ってたかって輪わされるかも…」

【ほんとにこいつはバカだ……ネジがぶっ飛んでる……】

通報されたら私だけじゃない、こいつの人生も終わると言うのに。

「カメラだってあるのがわかんない?…通報されたら終わりなんだって……」

さっきの客がレジを済ませて出ていくのが解った。
少しだけホッとする。

「あ~ぁ、帰っちまった…はぁ…つまんないの…さすがにAVみたいにはいかないか…了解っす…とりあえず飲みもん買って出ますか…」

「財布…車に…っん……」

不意にリードを引っ張られた。
少年は壁の冷蔵庫からミネラルウォーターを2本引き抜くとリードを手にしたままレジへと向かっていく。

「ここは俺のおごりでいいっすよ…」

私は胸元のボタンを留めて、少年の影に隠れる。
それでも首から伸びるリードまでは隠せない。
サングラス越しに店員を視ると、興味津々と私に笑みを浮かべていた。
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