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夜来香 ~若叔母と甥の危険な関係~
第14章 餓鬼
「はい、せっかく俺のおごりなんだから飲んでよ…セックスって汗かくっしょ…えっと結奈さんだっけ…そんなに若くないんだから水分補給…」

サングラスを外した私はなるべく隣を視界から外して運転していた。
キャップの空いたペットボトルが差し出される。
別に同意した訳じゃない。
振動に溢れてしまうかもしれない。
そんなことを思いながらペットボトルに口をつけていた。

「名前で呼ばないで……」

無愛想にそう呟いた。

「う~ん、なんて呼んだらいい?…陽翔のお母さんはおばさんって呼んでるしなぁ…ポチとか?…犬みたいだし…」

「ぁ、危ないっ……」

リードを引っ張られてハンドルがぶれた。

「危なっ…でもポチって牡の名前っすかね…」

私はなるべく感情を乱されないようにと思っている。

【ほんとにいけ好かない奴……】

私はキャップのないペットボトルを返す気にもなれず、ごくごくと飲み干してボトルホルダーに突っ込んだ。

懐かしい街灯が走る車のフロントガラスを照らしていく。
オフィス街は深夜ともなると人気もなく静かな様相だった。
それに殆んどの会社はお盆休みで余計にそうなのだろう。

「俺、この辺よく知らないんで適当に駐車場に突っ込んでもらえます?…」

【ほんとにこんなところで散歩する気?……】

どこかで思った。
これだけ人気がないならと…。

なんとなく使いなれたコインパーキングを目指していた。
私が働いていたオフィスビルのすぐ傍だった。

駐車場に車を停めるとタイヤ止めが迫り上がった。

「さ、行きましょか…」

隣でシートベルトが外れ、少年は車を降りた。
私は動く気になれない。
逃げたしたくても、清算を済ませないと車は動くことができなくなっている。

回り込んだ少年にドアが開けられ、リードを掴まれてしまう。

「往生際が悪いっすよ…電話してきたのはそっちでしょ…」

「痛いって…強く引っ張ららないでっ……」

サングラスに手を伸ばし、引きずり出されるように車を降りた。

「賢い犬ならこんなに強く引くこともないけどね…」

「こんな何もないところで散歩なんて楽しいわけ?……」

【なんで私が犬扱いされなきゃなんないの……】

キッと睨んだままサングラスで瞳を隠していく。

「楽しいかどうかはやってみないとわかんないすね…それよりもっと人通りの多いとこが良かったすか?…」
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