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夜来香 ~若叔母と甥の危険な関係~
第14章 餓鬼
【きつい…こんなに遠かったっけ……】

コインパーキングから目的のビルまでは150mくらいだったはず。
パンプスで歩いていた当時は何でもない距離だった。
男達が曲がって来た角からは50mほどだろう。

もう膝をつかずにになんて歩けなかった。
リードを掴む少年が真後ろを歩いていることもどうでもよくなっていた。

「疲れた?…」

「だったら立っていいわけ?……」

俺はほくそ笑んで却下した。
いい女が全裸で犬のように歩いている。
しかも親友が想いを寄せている女だ、もっと苛めたいに決まっている。

「ほら、もう少しっすよ…」

俺はスマホのマップを閉じてポケットにしまい込んだ。

私は馴染みのあるビルの前で止まった。

「ここだから…もう首輪外して……」

「ちゃんと入り口までいきましょうよ…懐かしいんでしょ…あ、あんまりいい思い出ないんすか…」

本当に気味の悪い少年だった。
会社を辞めた本当の理由を話した人間なんてたかが知れている。
その中の誰かと繋がりがあるということなのか。
とはいえ、今更私がここに執着などしていないのに…。

「行けばいいんだろ……」

歩道からビルの入り口までは10段ほどの階段になっていた。

「ほんとに口が悪いっすね…陽翔にもそうなんすか…」
10段といっても階段のひとつひとつは二歩分くらいの幅の広いものだった。

疲れ以上に私は追い詰められていた。
ものすごく発汗していた。
それは見知らぬ男達に視られた羞恥心だけじゃない。
その時抱いた感情も定かではない。

この汗は脂汗だった。

【なんでこんな時に……】

入り口までたどり着けばこの馬鹿げた散歩は終わるのだろうか。
終わりにしてもらわなければ困る。
もう淫裂から滴る愛液すら気にならない。
膀胱が張ってきた。

「ねぇ、どうかしたんすか?…なんか尻がさっきより震えてんすけど…やっぱり視られて興奮したんでしょ…もうびしょびしょになってんのもバレバレっすよ…」

今は蔑まれる方がましだった。
怒りに感情がそちらに向く。
でも、反論する余裕はなくなっている。

なんとか階段を昇りきる。
私は四つん這いのまま振り向くように少年を見上げた。

【もう許して…すぐに車まで戻して……】

そこまで間に合うのか?
間に合ってトイレまで我慢できるのか?

瞳を潤ませ、私は絞るように口を開いた。
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