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夜来香 ~若叔母と甥の危険な関係~
第14章 餓鬼
【どこに向かってるの……】

少年は曲がり角の度に指示を出してくる。

【この方向って……】

陽翔の住む街に向かっているように思えた。
同じ高校に通っているのだ、こいつの住む街でもあるのだろう。

【こんなところにホテルになんてあったっけ……】

「隣街っすよ…心配しなくても…」

【まさかこいつの家?…そんなまさか……】

「そこ左折してまっすぐ行けば駅なんで…○○インってホテルがあるんでそこで…」

「え…それって普通のホテルじゃ……」

「そうすっね…どこでもいいんでしょ…」

私はウインカーを出すと、目的のホテルの地下駐車場へ滑り込んでいった。

ワンピースを返してもらい、袖を通しボタンを留める。

「ウィッグも取った方がいいっすよ…こんな時間に怪しすぎっすからね…」

【だったらラブホでいいじゃない……】

車の中でウィッグを脱ぎ、後ろで結っていた髪を解いた。

地下駐からエレベーターで2階のフロントへと向かった。
少年はずっとスマホを弄っていた。
とても高校生がこれからセックスに臨む態度ではなかった。

これが陽翔だったらずっとくっついているだろう。

エレベーターが開くと思ったより広いフロントフロアだった。

「チェックインは済ませてあるから…903号室って言えば鍵くれますよ…」

背後から少年はそう囁くように言った。
フロントには誰の姿もない。
私は呼びベルを遠慮がちに鳴らしてみた。

「お待たせしました…」

まだ若そうなホテルマンが出てきた。
私はどうしていいか戸惑ってしまう。

「姉さん…もう眠いんだから早くしてよ……すみません、903号室の神崎です…」

「失礼いたしました…神崎様…お帰りなさいなさいませ…」

フロントスタッフはカードキーを渡してくれた。

【最初からここに来るつもりだった……】

「ありがとう…おやすみなさい……」

私はカードを受け取りエレベーターに向かう少年を追いかけた。

「誰が姉さんよ…ずいぶんと段取りいいじゃない……」

「俺達ってどう見えるんすかね…ラブホじゃわりとめんどくさいこともあるんすよ…」

【どんな経験をしてきたんだ、こいつは……】

フロントスタッフは…お帰りなさい…と言った。
ということは一度チェックインでここに来たことになる。

【一人で?…誰かと?……】

前を歩く少年が益々不気味に思えた。
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