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夜来香 ~若叔母と甥の危険な関係~
第16章 アトリエ
「困りましたね…私は藤沢くんの人物画が観たい…もう文化祭までそんなに時間はありません……モデルになろうと着替えまでして来ました……何をぐずぐずと考える必要があるのでしょう……」

【ほんとにズルいですよ…部長……】

目の前にしゃがみ込む先輩の表情はなんだか楽しそうだ。
ブラウスのボタンは二つ外れている。
白い肌が見えて、膨らみの影が覗いていた。
しゃがんだ膝はぴたりと閉じられている。
でもずれたスカートの裾がその奥の影を妖しく作っていて、僕はトクン…と鼓動を打つ音に戸惑った。

【こんなに綺麗な人を僕が描けるんだろうか…】

先輩は急かしたりしないけど瞳は、どうするの?…と訴えている。

「先ずはデッサンさせてください……それで描けると思ったらでいいですか?…」

僕が呟くように言うと、先輩はにっこりと微笑んで立ち上がった。

「大丈夫ですよ…私が見込んだんです……絶対にいい絵に仕上がります……どこがいいですか?……うーん、悩みますね……」

はしゃぐように先輩はまたアトリエを見渡す。

【ずっとそんな目で視られていたら描くものも描けませんよ…】

「部長…斜め後ろ姿でお願いできますか…あのスケッチじゃ納得いかないので…ちゃんとデッサンしてみたいんです…」

先輩は僕の真意を覗き込むかのように見つめて、また微笑んだ。

「わかりました…じゃあ、藤沢くんはそこの椅子に座ってください……私は…えっと…あ、この辺りがいいですね……」

僕はバッグから筆箱を取り出して中からやたらと芯の長い鉛筆を手にした。
きっと普段、先輩が使っている木製の丸椅子に腰掛ける。

先輩は背凭れのある、やはり木製の椅子を引きずりモデルになる位置を決めた。

僕をちらりと視て、椅子の角度を決めると…

左膝を座面につくように乗せる。
右脚は真っ直ぐ床について、左手は背凭れに置き、右手で髪を耳にかける仕草をした後…自然に下に下ろした。

僕は、ドキッとした。
斜め後ろ姿の完璧なフォルムがそこにあった。
撫で肩の柔らかなラインの始まりは、片膝を上げていることに背中から腰を食い込ませ、そこから上向きのヒップラインを強調していた。
自然に下ろした腕がその向こうに覗く柔らかそうな膨らみを嫌味なく出現させている。
真っ直ぐに伸びた美脚…そこで違和感に気づいた。

【部長…そこに立ったのは偶然ですか?…】
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