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夜来香 ~若叔母と甥の危険な関係~
第16章 アトリエ
【やっぱり藤沢くんには見どころがありますね……】

唇に触れる指先…最初はあんなに震えていたのに…。

クスッ…と、私はティーバッグを揺らしながら微笑んだ。

トレーに紅茶とプリンを乗せる。

【あなたの画家としての才能…もっと私が引き出して差し上げますよ……】

「お待たせしました……藤沢くん、お砂糖は?……」

「あ、いえ…そのままで大丈夫です…ありがとうございます…」

ソファはロングソファだけだった。
目の前のテーブルにトレーが置かれると、先輩は隣に腰を下ろした。
僕は不自然にならないよう股間の上で手を組んだ。

【よかった…左隣で…】

これでなんとか右手は使えそうだ。

「…やっぱり美味しいですね…私、プリン大好きなんです……」

「よかったです……あ、ほんとに美味しい…」

「あれ?…藤沢くんは初めてなんですか?……」

僕は照れながら答える。

「すみません…人気だって聞いて…お店にも初めて行ったんです…」

「じゃあ、ここのガトーショコラも今度食べてみて下さい…濃厚でとても美味しいんですよ……」

僕達は絵のことには触れず、驚くほど他愛もない会話を重ねていった。
おかげでずいぶんと緊張が解れていった。

先輩が紅茶のカップを置くと、静かに立ち上がる。
僕も慌てて飲み干していく。

「藤沢くん…次はこれを使ってください……」

差し出されたのはA4サイズの小さなスケッチブックだった。

僕はきょとんと先輩を見た。

「藤沢くんの使っているのは少し大きいでしょう?……立って描くならそのサイズがいいかと思いまして……」

「立って?…椅子じゃなくて…」

先輩の意図が理解できずに聞き返す。

「はい…手や耳…唇だけじゃ…あなたの中で私は完成しないでしょう?……次はどこを描いてみたいですか?……」

僕はフリーズした。

【待て待て待て待て…部長は何を言ってるんだ?…】

「スケッチブックは小さいから…パーツパーツで描いていきましょう……」

固まる僕に先輩は何でもないことのように話しかけてくる。

「…パーツ…って…」

「はい…先ずはどこから描きましょうか?……」

【先ずはって…】

僕はまた息を飲んだ。

【その笑み……】

叔母が魅せる妖しげな微笑み…。

先輩は僕をその笑みで見つめながら後退去っていく。
そしてゆっくりとベッドに腰を下ろした。
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