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夜来香 ~若叔母と甥の危険な関係~
第16章 アトリエ
【足…ですか……】

私はちょっとがっかりした。
唇まで触れさせ、視えないところを描くように誘導してきたのに…。
でも、彼の視線は明らかに視えない部分を追ってきた。

【いきなり豹変はできないですか……】

今日は家政婦も居なければ、両親に至ってはお盆明け早々仕事で明日まで帰って来ない。

【私には時間があるのですが……】

彼の急の外泊などご両親が許可してくれるのだろうか?

そんなことを想いながら足をデッサンしていく後輩の真剣な眼差しを眺めていた。

【足の次はどこを描くつもりなんですか?……】

真剣さならきっと私の方が真剣だ。
芸術家は得てして皆、変態なのだと思う。
私の叔父が正にそうだった。
それが高じてこの家を出る羽目になった。
このアトリエは叔父の置き土産…私の両親も私が絵にのめり込むのを快く思ってなどいない。

間違いなく私も芸術家なんだと思う。

【違う……私はそうなりたい……だってあの昂りは、どんなにテストで学年トップになっても味わうことなんてできないんですから……】

「部長…どうですか?…」

この子だってそうなんだと思う。
女性の身体を視て反応は男の子なら誰もが示す。

【でもこんなに上手に描きながら…興奮を示すなんて…私と同じ…ですよね?……】

見せられた左足のデッサンは手と同様にとても上手に描けていた。

「はい…手と同じように上手に描けていますね……さて、藤沢くん…次はどうしますか?……あ、尋ね方が違いますね……私を描く覚悟はできましたか?……」

仮に僕にその覚悟があるとして…完成させた作品を僕は文化祭などという場に飾ることができるのだろうか…。
現実的な問題だと思った。
そして、先輩に圧倒された中で僕はようやく真面に叔母のことを想っていた。

【結奈さん……結奈さん以外の女のひとを描いてもいい?…】

そんなことを行ったら叔母は…

『美大に行こうかどうかって言ってる人が何言ってんの……ヌードでもなんでも描けばいいんだよ……』

想像ができた。

【そうだ…部長だって…いや、部長の方が真剣に絵に取り組んでいるんだ…】

もっと集中すれば、邪なことも忘れるはずだ。

「先輩…次は……ふぅっ…ブラウスのボタンを外してもらえませんか…」

私は彼の言葉に力を感じた。

【できたんですね……じゃあ、私の居る世界に誘ってあげます……】
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