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夜来香 ~若叔母と甥の危険な関係~
第20章 姉の事情
「おばさん…上がるよぉ…」

一戸建ての我が家は日中鍵などかけていなかった。

「はーい、どうぞぉ……」

ドタドタと廊下を歩いてくる。
健人くんはいつも元気だと感じる日常の足音。

「先に手を洗ってらっしゃい…おやつあるから……」

「了解です…」

勝手知ったると健人くんは洗面台で手を洗ってから顔を見せた。

「陽翔は今日も遅くなるの?……」

リビングに買っておいたモンブランを出して問いかける。

「ぁぁ…あいつこの前コンクールで入選したでしょ…あれからモテまくりなんだよ……美術部だのクラスの出し物のポスターまで作ってて忙しそうにしてるよ……いただきます…」

「あら、そう……サッカー部のエースだった健人くんより?……」

「おばさんまで…過去形で言わないでくれるかな…」

私達は笑いあっていた。

「夜までここで勉強して帰るでしょ?……」

「うん、陽翔に教えてもらうのが一番解りやすいからね…」

「今日は健人くんの好きな餃子よ……楽しみにしてて……」

「やったね…俺、手伝うよ……」

「いいって…受験生なんだから、上で勉強してなさいな……」

最近、気難しくなった息子よりも遥かに会話が弾んでいた。

「わかった…ありがとね…」

ぺろりと食べ終えたケーキのお皿を下げようと私は立ち上がった。
健人くんも立ち上がる。
二階に行って勉強でもするのだろうと背中を向けた。

「ちょ、ちょっとどうしたの?……」

健人くんが背中から抱きついてきた。

「なんでだろ…なんか急にこうしたくなって…」

驚いたが強く拒絶することはなかった。
聞き分けのいい子だと解っていたから。

「ふざけないてないで…これから餃子包まなきゃいけないんだから……」

【陽翔が忙しくしてて…部活を引退したエースはもしかして傷心気味なのかな……それで甘えたくなったりしてるとか?……】

少しだけこのままで居てあげようと思った。
母性本能がそうさせたのかもしれない。

「こら…健人くん…どこ触ってるの……もう離れて…ほんとに時間なくなっちゃうから……」

私は下げようとしたお皿とコーヒーカップを持っている。
それなのに健人くんが服の上から胸に触れてきた。

「だめだよ…俺…おばさんのことが好きなんだから…」

この時は既に夫は単身赴任で不在だった。
あろうことか私はちょっとキュンとしてしまった。
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