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夜来香 ~若叔母と甥の危険な関係~
第6章 ご褒美
次の瞬間、大きな溜め息をついていた。
「はぁっ……」
【調べるのは帰って来てからか…】
岩田は見た目どおりの建築現場作業員だった。
明日から3ヶ月遠方での仕事が入っていた。
ゼネコンの下請けの下請けみたいな会社に所属していた。
上が決めた現場には黙って行くしかない。
携わる物件が大きければ今回のように数ヵ月に渡ってアパートを空けることもあった。
【まぁ、向かいの家の関係者なのは間違いないだろ…待ってろよ…戻ったら大人同士で楽しませてやるよ…】
そうほくそ笑みながら台所の窓をぴしゃりと閉めた。
陽翔へのご褒美と称して及んだ行為。
心配するのは姉だけと鵜のみにしていた。
向かいのアパートは入り口のドアが道路に面していた。
磨りガラスの格子付きの窓から誰かが覗くなんて思ってもいなかった。
私はその事実を知らない。
それを思い知らされるのはまだ先のことだった。
「悪いね、姉さん…お酒までよばれちゃって……」
陽翔の好成績のご褒美だと姉がビールを出してくれた。
酔っぱらうほど飲んでなどいない。
「いいのよ…これからもよろしくって意味だから…」
【姉のこういうところはちょっと恐い……】
「陽翔…そういうことだからしっかり勉強しなさいよ……」
私は陽翔に話を振った。
「結奈さん…何回言わせるの…頑張るって言ってるでしょ…」
陽翔は私が酔ったとでも思ったのか、膝に手を伸ばしてきた。
【まったく、今日はお触り無しだって言ってるのに……】
払い除けたりはしない。
ただ、手を合わせる。
「美味しかった…姉さん、ご馳走さま……」
「ぁ…結奈さん…もう帰っちゃうの…」
陽翔は膝から手を引いていく。
「うん、また来週……じゃあ、帰るから……」
私はあっさりと席を立った。
「そう?…お寿司少し持って帰る?…」
それは有難いと快くお願いした。
姉がタッパーを取りにキッチンに行くと…
「今日はお触り無しっだって…来週までポケットの中のモノで我慢してなさい……ほんとに見つかるなよ……」
私は陽翔に耳打ちした。
「わかってるよ…」
陽翔も囁き返してきた。
二人に玄関まで見送ってもらう。
「じゃあ、二人とも…おやすみ……」
玄関を閉めると私は振り向き歩き出した。
横目にアパートを見ると、バスの時間だと小走りに角を曲がっていった。