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夜来香 ~若叔母と甥の危険な関係~
第9章 触指
「嫌なわけないでしょ……いいよ、その代わりここじゃなくて私のマンションで預かるからね……陽翔もいいよね?……」

だめなわけがない。
僕は何年振りに母に抱きつきたくなった。
叔母の住むマンションに行ったことは一度なかった。

「よ、よろしくお願いしますっ…」

僕の声は裏返っていたらしい。
母と叔母は顔を見合せ笑っていた。

明日はドライブ…それで来週は叔母の家に泊まれる。

【だめだ…顔が笑ってしまう…】

それを察してくれたのか。

「姉さん…トンカツ私の分もあるんでしょ?…手伝うよ……」

「もちろんよ、結奈の好きな大根おろしもあるから……じゃあお願いね…」

母と叔母はキッチンで料理を作り出した。
当然、僕の視線は叔母だけを追っていた。
時折、視線に気づいた叔母が微笑んでくれた。


翌日、朝からそわそわしていた。
10時10分に家の前で短いクラクションが2度鳴った。
僕はいいと言ったのに母は見送ると一緒に玄関から出てきた。

「なぁに?…日帰りよね…キャンプにでも行くつもり?…」

母の言う通りだった。
なんとなく叔母のイメージからスポーティーな車を勝手に想像していた。
映画やドラマのワンシーンを想い描いていたけど、家の前に横付けされた車はワンボックスカーだった。

助手席の窓を開けていた私はサングラスをずらして瞳を覗かせるように姉の質問に答える。

「仕方ないでしょ…急だったからこれしかなかったのよ……」

もちろんそれは嘘だ。
今日の目的はドライブじゃない。
期末テストのご褒美に二人きりになるのが真の目的だった。
とはいえ、甥っ子をラブホテルなどに連れ込むつもりなど毛頭ない。
そんなことをしたらきっと陽翔は我慢できなくなってしまうだろう。
今の私は流されてしまいそうだ。

だから後部座席がゆったりとしていてスモークの貼られたワンボックスを選んだ。

「ほら、ここ道狭いんだから早く乗って……」

僕は言われるがまま助手席に乗り込んだ。

「じゃあ、姉さん行ってくるね……」

「…いってきます……」

僕も控えめに母に挨拶した。

「気をつけてね……いってらっしゃい…」

サンクスを戻して窓を閉じる。
手を振る姉を残して車を出していった。

「シートベルトして……」

「うん…」

僕はシートベルトを締めながら真横の叔母に視線を向けた。   
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